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人を育てて業績アップ・売上アップにつなげていくためには何ができますか?

人を育てて業績を上げたいマネージャー様へ株式会社スパイラルアップでは、「ほめ育」という独自の人材育成方法により、これまでに多くの企業の業績を上げたり、職場環境を改善したりと、直接的な成果につなげてまいりました。

「ほめて、育てる」、というと簡単に聞こえるかもしれませんが、「ほめ育」の「ほめる」は、おだてるのとは全く異なります。また、ほめ育は継続していくことが重要ですが、「ほめ育」のプロフェッショナルの講師陣が、全力で継続をサポートいたします。

 

成功事例・導入企業様の声

「店長、今のうちの店はほめ育なんてやってる場合じゃないでしょ?」

私が自店へのほめ育導入を決意したとき、現場から上がってきた声がこれだった。
会社が実施したスパイラルアップの研修会。そこに参加し、原先生の「ほめ育ノウハウ」と「ほめシート」というツールに出会った私は、「これはいいものをもらった」と喜び勇んでシートを書き、スタッフへ渡そうとしたのだ。

研修で教えられたとおりにスタッフ一人ひとりのことを思い浮かべながら時間をかけてほめシートを書き、これまた教えられたとおりに一人ずつ呼び出して読み上げ、渡した。
研修で学んだとおり、喜んでくれるスタッフは多かった。笑顔を浮かべ「ありがとうございます、店長」と言ってくれるスタッフがほとんどだった。


しかし、ある一人の女性パートに渡したときのことだ。
彼女は店の一番の古株で、パートながら私よりも社歴の長い(もちろん、店舗歴も長い)"店のヌシ"で、スタッフ全員の気持ちを掌握している人だった。

私はいつものように休憩室に彼女を呼び出し、ほめシートを読み上げて渡した。他のスタッフが私に見せてくれたような、少しはにかんだぎこちない笑顔を、彼女も見せてくれるものとばかり思い込んでいた。

だが違った。彼女は私がほめシートを読み上げる間も、私が笑顔で手渡したほめシートを受け取る間も、うつむきがちに視線を外し、薄笑いにも似た微笑みを浮かべて、仕方ないと言った風に受け取るだけだった。
「これからもよろしくね」
彼女の態度に多少の戸惑いを感じてはいたものの、私は最後にそう付け加えて仕事に戻ろうとした。
正直なところ、ほめシートを渡すうちに何とも言えない居心地の悪さを感じ始めていて、役目を終えたら早々にその場から立ち去りたかったのだ。

「あの……店長、ちょっといいですか?」
休憩室のドアを開ける私の背中に、彼女の声がかかった。うつむいたまま、声はためらいがちではあったが、しかし確固たる決意を秘めた声だった。
「どうしたの?」
「こういうの、今やってる場合なんでしょうか?」
「えっ?」
ほうけた顔で私は相づちを打った。胸のあたりで何かが破け、中から生暖かい嫌なものが身体中に拡がっていく。「……ど、どういうこと?」
彼女はものわかりの悪い私にため息をつくと、ようやく顔を上げ、しっかりと私の目を見据えて、諭すように続けた。

「今、ウチの店ってこんなことやってる場合じゃないですよね。もうちょっとお店の現状に目を向けてみたらどうですか。売上もそうだし、もっと他にやることあるんじゃないですか?」
彼女の意見を聞くうちに、私の胸は早鐘を打ったように高鳴っていった。時間をかけて書いたシートを「こんなもの」と言われ、店の長である私がまるで店のことを何もわかっていないとでも言いたげな口ぶりに、研修で学んだことや彼女に対するこれまでに積み上げてきた良いイメージ、何より、私自身の自制心が瓦解していき、研修を受けて以来、高まっていたモチベーションがみるみる収縮していくのがわかった。

こんなはずでは……。
ほめシートを書けば上手くいくんじゃなかったのか……?
私はどうしていいのかわからなかった。怒るべきか、悲しむべきか、それとも平静を保つべきか。彼女の発言に対してどんなリアクションを取ることが店長として、男として、人間として最もふさわしいのかがわからず、「失礼します」と言って部屋から出て行く彼女を、ただ見送るしかなかった。
恥ずかしい話だが、このときになって初めて、私は自分が直面している問題の存在に気付いたのだった。

◆◆◆

毎月のほめ育研修店一番の古株女性スタッフからの拒絶を受けた私の心の傷は、自分で意識しているものより深かった。それがわかったのは、後日、再び研修に参加したときだった。

研修では毎月、選出された5店舗の店長が「ほめ育」を導入しての自店での成果を発表する。もちろん、私が今までそれに選出されたことはない。
今まではそれでもいいと思っていた。売上さえ上がればいつかは選ばれると思っていたからだ。

 しかし、その日の研修では違った。同期がほめ育の成果を発表している、隣席の後輩店長が選出されているその現実に、私は完全に打ちのめされた。
私の店舗の状態と比べたら、まるで別世界だ。あいつらと自分は何が違うのか。
自分も同じように「ほめ育」を実践したのに、どうしてこんな差が生まれるのか――そんな気持ちが、ずっと私の中にわだかまっていた。

懇親会では選出された店長たちが部長の周囲に席を宛てがわれ、ビールを注がれる。
恒例の光景だったが、この日はいつもとは違って見えた。手酌で飲む自分の酒だけが、妙に苦く感じられた。
会がお開きになり、メンバーが三々五々に去っていっても、わだかまりは私の中に残っていた。

「おい、どうした? 今日はずっと浮かない顔してたな」
 駅までの道のりで、声をかけてくる者がいた。今日の研修で選出されていた同期の店長だった。年齢も近く、異動で離ればなれになる前はよく飲みに行った仲だ。
「そうか? それよりお前こそ、良かったな選出されて。すごいじゃないか」
 私は自分でも恥ずかしいぐらいよそよそしい態度で彼に言った。
「まぁな。前に原さんが言ってたことが、響いちゃってな」
 しかし彼はそんな態度を気にしていない様子で言った。その態度に私は、すぐに自分が恥ずかしくなった。私は勇気を振り絞って聞いた。
「なんて言ってたっけ?」
「相手の痛みに共感、ってやつだよ。それを聞いてから俺、考えたんだ。自分の人生の底って何だったかな、って」
「人生の底?」
「相手の痛みに共感するためには、自分の痛みを相手にカミングアウトしなきゃいけない、って言ってたじゃないか。だからさ」

 私は呆気にとられた。そういえば、最初の頃にそんなことを言っていたような気がする。
メモにも取っていたはずだ。すっかり忘れていた。でも、そんなことで売上が上がれば苦労はしない。私は頭に浮かんだことを素直に訊いてみた。 「それだけで売上が上がったのか?」
「そんなワケないだろ」彼はよって赤みが刺した頬を緩めた。
「でも、それがスタート地点なんだって、やってみてわかったよ。スタッフは上司にわかって欲しいんだよ、自分ががんばっていることを。わかってもらえたら、認めてくれた人のために自分もがんばろう、ってなるのが人間だろ?」

話を聞きながら、私は体の中の酔いがゆっくりと醒めていくのを感じていた。脳の至る所に引っかかっていたトゲのようなものが、1つ1つ外れていくような感覚だった。
そして代わりに奥底から、暖かいエネルギーのようなものが湧いてくるのがわかった。
「なぁ、久しぶりだし、もう1件行こうか?」  私たちは駅前についた。
しかし何気ない酒の誘いさえ、もう受ける気にはならなかった。それよりも自分にはもっとやらなければいけないことがある――そんな確信が私を満たしていた。

「いや、ちょっと用事ができた……」
 私はそう言い残して、ホームへの階段を駆け上がった。

 

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